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「京菓子職人が作り出す、京の春」

「馬のお尻をたたいて70年くらいたちますわ〜、え〜、アンを包むことを馬のお尻をたたくて言いますにゃ」

13才の時にこの世界の門をたたいた村上氏は、「長久堂」の味と伝統を守り続ける第一人者です。「あんたさんとこの為に、春の新作、3つ考えましたんや。三日三晩かかっても〜たわ〜」と笑いながら村上氏。

「私昔ね〜長久堂のすぐ前に住んでいたんですわ、今はちゃいますけどね。昔はここらへんみ〜んな畑やったんです。よ〜遊んでましたわ。」と、 新作の1つ「すみれ野」は、村上氏が幼少の頃遊んだ北山の「すみれ野」をイメージしたものなのです。「色と飾り」に拘る村上氏が作り出す春の生菓子は、淡いグラデーションカラーが美しく愛らしい春を感じさせます。

またお花モチーフの和菓子を作る際にも「花は生きてるんです、造花やないしね〜。そやからしなやかに柔らかい本物の花を作らなあきしませんねん。そやさけね、お菓子こしらえるんにもね、同じとこ2回も3回も押してたら形が死んでしまいますにゃ。」との拘り。村上氏の全ての生菓子には生命が宿っているのです。

これぞ熟練の成せる技。村上氏によって命を吹き込まれた京菓子たちは見事に美しく、たおやかに長久堂さんの店先に並んでいます。


◆長久堂

〒603-8044
京都市北区上賀茂畔勝町97-3
075-712-4405

天保2年創業の「長久堂」は茶道お家元御用達の京菓子司です。京菓子職人の拘りと長年の技が作り成す季節の生菓子は「お茶席の華」と茶人達に大変喜ばれています。
そんな季節の生菓子を北山店の茶房ではお抹茶と共にいただくことができます。また忘れてならないのが「長久堂」の代表銘菓「きぬた」です。こちら農家の女性が絹の光沢を出すためや柔らかくするための道具「きぬた」を使って作業をしている姿から考案されたもので、羊羹を求肥で六重・七重に巻き上げ、和三盆を振りかけた、見た目もお味も上品な京都を代表する銘菓なのです。
京菓子が他の菓子と違うのは人間の五感で食するという点です。目で見て京菓子の美しさや季節を感じ、切って口に入れて、その味と食感を楽しみます。ニッキやショウガ等のほのかな香を薫りつつ、最後に京菓子の菓銘を聞いて楽しむのです。茶人にとって、茶菓子と菓銘を見比べてその語彙を考えることが1つの楽しみでもあるのです。四季を表現した京菓子には1つ1つ銘があり、四季、花鳥風月、和歌、俳句などからつけられています。「桜やからと言って桜作ったらあかんのです。
食べるお客様に桜をイメージさせるモンを作らなあかんのです。」と村上氏。お茶席に運ばれる村上氏の茶菓子は全て抽象的なモノです。かわいらしい黄色の姿をした新作「糸遊(かげろう)」は、普通「陽炎」と使いますが、村上氏はあえて「糸遊」とつけました。滋賀県の菜種畑に浮かび上がる「糸遊」は特別なモノで、その春の風景をイメージした情緒ある作品なのです。茶人だけではなく日本人の心を動かす京菓子、この五感の芸術品を作り出す京菓子職人は、まさに食の芸術家なのです。